世界の富裕層は「日本」を選ぶ

PewDiePie(ピューディパイ)という人私は知りませんでした。

スウェーデン出身のYouTuberで、個人チャンネルとしては世界で初めて登録者1億人を突破した、いわば「YouTubeの王様」と呼ばれた人。日本ではあまり知名度がないですが、英語圏ではマクドナルドやコカ・コーラと同じくらい、誰もが知っている人だといわれています。(本当?)

彼は、2022年5月に日本へ移住しました。

奥さんと愛犬2匹を連れて、プライベートジェットで。


「日本が好きだから」——でも、それだけじゃない

PewDiePieが日本を選んだ理由を本人はシンプルにこう答えています。

「日本が好きだから」

アニメ、ゲーム、近代文学、ウィスキー。彼の日本への関心は10代のころからあったそうで、来日も何度もしていました。コロナ禍で水際対策が厳しくなり、移住準備をしていたのに入国できない時期が続いたほど、温め続けた夢でもありました。

ただ、「好きだから移住する」というのは、旅行でも叶えられそうですよね。登録者1億人超のスーパースターが、言葉もわからない国にわざわざ移住する理由は、もう少し深いところにある気がします。

「透明人間になれる国」という価値

移住から1年後、PewDiePieは「ジャパンレビュー」という動画を投稿しました。日本の好きなところと嫌いなところを正直に話すもので、その中で彼が「日本の一番好きなところ」として挙げたのが、意外なことでした。

「東京の人混みを歩いていても、誰も自分を見ない」

日本の有名YouTuberトップ、じゅんやさんの登録者数が約3300万人。PewDiePieは1億1100万人。3倍以上の規模ですが、日本では「ただの背の高い外国人」として普通に街を歩けるそうです。

考えてみれば、これはすごいことです。世界中どこへ行っても追いかけられる、常にカメラを向けられる、そういう生活をずっと送ってきた人が、「普通の人として生きられる場所」を求めて移住してきた。

日本人の英語力の低さが、逆に彼のプライバシーを守ってくれているというのも、なんとも複雑で面白い話だと思います。


数字で見る「外国人と日本」

2024年末の時点で、日本に住む外国人は376万人を超えました。前の年より10.5%増えており、過去最高を更新しています

「外国人が増えている」といっても、その中身はとても多様です。技能実習生として働く人、留学生、IT企業に勤めるエンジニア、そしてPewDiePieのような富裕層まで。日本が外国人にとって「いろんな理由で来たい場所」になってきているのは確かなようです。


円安だけじゃない——富裕層が日本を選ぶ本当の理由

「円安だから日本が人気なんでしょ? でも旅行でよくない?」

私も最初そう思いました。でも調べていくと、移住を選ぶ理由はもっと複合的でした。

理由その一:不動産が「世界的に割安」

東京の高級マンションの価格は、香港の半分以下だそうです。しかも外国人でも2%台の低金利でローンが組める。先進国で「利回りが金利を上回る」のは日本だけという状況があり、不動産投資家にとっては見逃せない市場になっています。セカンドハウスとして東京や軽井沢に物件を持つ、という富裕層も増えています。

理由その二:安全で、清潔で、食がおいしい

これはデータよりも、実際に住んだ人たちの声に繰り返し出てきます。治安のよさ、公共交通の正確さ、街の清潔さ、食の質の高さ。旅行で気づいた日本の良さを、「毎日感じたい」と思った結果が移住なのかもしれません。

理由その三:「逃げてきた」富裕層もいる

2025年、イギリスでは富裕層への課税が強化され、1万6千人以上が国外へ移住したと報じられました。富裕層にとって「どこに住むか」は、税金とも深く関わっています。日本が直接の「節税先」になるケースは多くないようですが、生活の質と安全を求めて、ヨーロッパから移ってくる富裕層の選択肢に日本が入り始めているのは確かです。

理由その四:リゾート地が「ちょうどいい」

北海道のニセコ、長野の軽井沢、静岡の箱根。これらのリゾート地は、外国人富裕層に人気の「別荘エリア」になっています。何度も旅行で訪れるうち、「ここに家があればいい」と思うのは自然な流れかもしれません。


日本は完璧ではない——PewDiePieの正直なレビューから

PewDiePieは日本への愛情を語る一方で、正直な批判もしています。

「意味のわからないルール」が多い、という指摘です。

言葉の壁、外国人には複雑な手続き、官僚的な対応……「日本は最高!」という単純な話ではなく、住んでみてはじめてわかる不便さや壁も確かにあります。それでも彼が日本に住み続けているのは、それを上回る「何か」があるからだと思います

地方で暮らす私が感じること

外国人富裕層が増えているのは、今のところ東京・大阪・リゾート地が中心です。

でも、地方にも変化の兆しはあります。北海道ニセコが外国人に「発見」されたのも、最初はスキー目的で来ていた外国人が「ここの自然はすごい」と広めたことがきっかけでした。

日本全国に800万戸あるとも言われる空き家。地方の古い家や土地が、外国人の目にはどう映るのか。PewDiePieが「自然の近くで静かに暮らしたい」と語るような価値観の人たちにとって、地方の暮らしはむしろ魅力的に映るかもしれません。

地方に住んでいると、人口減少や空き家問題を「暗い話題」として見てしまいがちです。でも世界の富裕層が日本を見る目を知ると、私たちの「当たり前」が、誰かの「夢」であることに気づかされます。

もちろん、移住者が増えればそれで地方の問題が全部解決するわけではありません。地域の文化や関係性を守りながら、どう共存していくか——そこが本当に大切な問いだと思っています。

そのあたりは、またゆっくり考えていきたいと思います。


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