富裕層というのは、どこへ行くにも自分で選んでいます。
行かされるのではなく、行きたいから行く。住みたいから住む。そして一度「ここだ」と決めたら、驚くほどのお金と時間を投じる。
その目が今、日本の田舎に向いています。
すべてはニセコから始まった
2003年、あるオーストラリア人が「ニセコに住む外国人向けにコンドミニアムを作れば絶対に売れる」と確信し、2階建て4部屋の小さな物件を建てます。図面を書く前に全室が完売したといいます。これが火付け役になり、ニセコの不動産市場が動き始めました。
「第二のニセコ」を世界が探している
ニセコの成功を見た外国人富裕層やデベロッパーは今、次の候補地を探しています。
鍵となる条件は三つ。スノーリゾートであること、不動産価格がまだ安いこと、そして教育環境が整っていること(家族で長期移住するためには子どもの学校が必要です)。
長野県白馬村はすでに「プチニセコ化」が進んでいます。1998年長野五輪の舞台として知られる白馬は、2010年代からオーストラリア人やアジア系の観光客・投資家が増え始め、欧米豪向けの高付加価値旅行の目的地として注目されています。
沖縄・石垣島では台湾や香港からの観光客増加に伴い不動産投資が活発化し、京都の歴史的な町並みが残るエリアでは外国人による町家の購入・改装が増えています。タイの富裕層視察団がニセコを訪れ「次の投資先」を探しているという話も聞こえてきます。世界の富裕層の目が今、日本の地方をスキャンしています。
自治体は今、何をしているか
富裕層の外国人が不動産を買うことについて、自治体の動きは二方向に分かれています。
ひとつは「歓迎と誘致」。外国人富裕層の長期滞在を増やし、地域経済の底上げを狙う動きです。地方観光地の多くが「消費単価の高い旅行者を呼びたい」と考えるようになっています。
もうひとつは「実態把握と規制の議論」。
国レベルでは2025年7月、国土利用計画法の施行規則が改正され、大規模な土地取引において取得者の国籍の届け出が義務化されました。「外国人が日本の土地を買える国」として異例の自由さを保ってきた日本も、少しずつ実態を把握しようとする方向に動き始めています。
地方にいる私が思うこと
富裕層の外国人が来ることは、地域にとって良いことでしょうか。悪いことでしょうか。
大事なのは「どういう富裕層を、どういう形で迎えるか」
短期の投機目的で土地を買う人と、安曇野に半年住んで田んぼを「水鏡」と呼ぶ人は、同じ「外国人の不動産購入」でも、地域に残すものがまったく違う。
その違いを見分けることができるか。そして、地域に根を張ってくれる人を迎え入れる仕組みが作れるか。
ニセコが経験してきたことの先に、そういう問いがあります。
